ストレスチェックの実施者について

ストレスチェックを実施するにあたり、まず必要になるのが実施者の選定です。
ストレスチェックの実施者について、厚生労働省令では医師、保健師、一定の要件を満たした看護師又は精神保健福祉士が挙げられています。

実施者の選定にあたり、まず検討すべきことは産業医を実施者とするか否かという点です。
「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下、本コラムでは単に「指針」といいます)においては、ストレスチェックは事業場の産業医が実施することが望ましいとされています。
労働安全衛生法及び同規則においても、産業医は労働者の健康管理等の役割を担っており、ストレスチェック及び面接指導の実施並びにその結果に基づき労働者の健康を保持する措置を講じるものとされています(法13条第1項、規則14条第1項第3号)。
すなわち、法は産業医がストレスチェック・面接指導を実施することを予定しており、産業医によるストレスチェック・面接指導の実施がストレスチェック制度の実効性を高めるという観点でも望ましいといえます。

もっとも、産業医がストレスチェック実施者となることを拒否する等、事業者によっては外部機関に対してストレスチェックの実施を委託せざるを得ない場合も考えられます。
また、産業医単独では実施者とならないものの、外部機関と産業医とを共同実施者とする場合もあり得ます。

そこで、ストレスチェック実施者の構成として、以下の3パターンがあることになります。
①産業医
②産業医+外部機関
③外部機関

ここで注意すべき点として、
③を選んだ場合、すなわち産業医をストレスチェック実施に関わらせなかった場合、産業医を含む事業者側が労働者の同意なくストレスチェック結果を把握できないという点です。

ストレスチェック制度は実施することそれ自体に意味があるのではなく、それによってメンタルヘルス不調を未然に防止するという目的のための手段です。
そして、ストレスチェックを当該目的のために実効的なものとするためには職務環境・職務内容について把握した産業医の協力が必要であるところ、労働者の同意がないとストレスチェックの結果を産業医が知りえないということは制度の実効性を相当程度減殺する可能性があります。
そこで、事業者としては可能な限り①または②の体制を組むことで、ストレスチェックの実効性を確保すべきであるといえるでしょう。