クレームの一次的対応窓口
企業に対してクレームが出される場合、特に小売店や飲食店のような消費者と直接取引する形態の事業においては、現場スタッフが一次的なクレーム対応をすることが多くみられます。そして、多くの経営者が認識している以上にこの初期対応は重要であり、現場スタッフが初期対応を誤った結果、その後のクレーム対応に深刻な悪影響を及ぼすというケースが少なくありません。
典型的には初期対応方法自体(態度・言葉遣い等)がさらなる二次クレームに発展するパターンです。それほど怒っていなかったお客様が、初期対応にあたったスタッフの態度の悪さに憤慨してしまいクレームに発展するケースです。

悪質クレーマーの弊害
他方、相手が悪質クレーマーであれば、悪意をもってスタッフのありとあらゆる態度に難癖を付けてきます。元のクレーム内容自体は応じる必要のないものであったにも拘わらず、スタッフの対応が悪いために結果的に応じる必要のなかった要求に応じる羽目になるケースすらあります。
悪質クレーマーは時には罵詈雑言を加える等、様々な手段でスタッフを狼狽させ、不当な要求に応じさせようと試みてきます。このような場合、不当要求の対応に習熟していないスタッフがクレーマーとの間で応じる必要のない事柄について何らかの約束をさせられてしまうのが最悪の事態です。
約束した内容を守れという新たな要求が加わり、下手をすると元のクレームがなんであったかわからないような状況の中、当初は全く問題になっていなかった要求に応じさせられるようなケースも少なくありません。

現場スタッフ研修の必要性
このように、一次クレームを受ける現場スタッフが不当なクレームに対して適切な対応ができるかがクレーム対応においてまずは重要なポイントです。
もっとも、現場スタッフが全てのクレームに対して毅然と(要求を拒む方向で)対応するように指導したとすれば、それはそれでスタッフの対応が画一的で冷たいものとなってしまい顧客サービスという観点からは望ましくありません。特に、法的には応じる義務はないが顧客サービスの観点から何らかの対応が必要なクレームはあり得ます。
正当なクレームに対しては迅速且つ適切な、可能であればクレーム対応をきっかけに自社のファンが増えるようなホスピタリティを備えた対応ができるようにスタッフを教育指導すべき一方で、悪質なクレーマーに対しては毅然とした対応により不当な要求に決して屈することのない体制を整備することが肝要なのです。